無国籍三部作 No.1

アフター・オール・ディーズ・イヤーズ

After All These Years

《アフター・オール・ディーズ・イヤーズ》について……

 

アジアのパワーと混沌が、ヨーロピアンな深い思索をもって構築され、最後にはまるでハリウッド映画のような興奮で観客の心を釘付けにする。世界映画の理想的なカタチがここにある。つまりこの作者はエドワード・ヤンがやったさらにその先を提示しようとしているのだ。彼の名前はリム・カーワイ、是非とも覚えておかねばなるまい。

 

黒沢清(映画監督『トウキョウソナタ』『贖罪』)

 

 

ストーリー

 

10年ぶりに故郷に帰ってきたア・ジェ。しかし、家族でさえ彼の存在を忘れている。唯一彼を覚えているレストランの店主ラオ・ファンに連れられ、秘密の鍵を握る男に会いに行くが、殺人のぬれぎぬにより処刑されてしまう。その後、死んだはずのア・ジェが、再び別人格としてラオ・ファンのもとに現れる。空虚な日常を生きるラオ・フアンは、過ぎし日々に思いを寄せる。町に起こる奇怪な事件をきっかけに、彼らは新しい人生を手に入れるのか?第一部で自己の存在についての恐怖と疑いを、第二部で退屈な日常生活からの逃避を、空想と幻想を通して描いている。二つの異なった視点で世界を覗いたとき、観客は自然と白昼夢に引き込まれるはずだ。

 

 

プロダクション ノート


2009年の5月下旬、北京の郊外にクランクインされて、天安門事件20周年記念日の64日にクランクアップした本作は大阪大学、北京電影学院で学ぶマレーシア人のリム・カーワイが知り合いの役者とスタッフを集めて、自主制作した長編第一作目になる。

 

出演の大塚匡将は中国で活躍する日本人役者で、最新作はカルト映画の女王パム・グリア主演、HipHopの巨匠RZAが初めて監督したクンフー映画だ。もう一人の出演、(狗子)ゴウジーは北京アンタ―グランド演劇作家、小説家で、朱文監督の「トーマス・マオ」で強烈な印象を残した。そして、ヒロインを演じる何文超(へー・ウェンチャオ)は中央演劇学院監督コースを卒業した才女で、卒業制作は釜山映画祭短編コンペに出品されたし、今長編デビューを制作中で、これから注目される中国美人監督に違いない。

 

撮影監督のフォン・ビンフェイは香港の映像作家で代表作「香港公路電影」は97年の山形ドキュメンタリー映画祭にも出品された。「青い車」、「波」、「タイムレスメロディ」を監督した奥原浩志は本作で編集と照明を担当した。それ以外、美術、録音、制作、音楽にもアメリカ、カナダ、台湾など多国籍のクリアイターたちが参加して、リム・カーワイ監督のこれからの作品の多国籍化の特徴をつける。 

 

 

監督の言葉

 

 この作品は2部構成で、第一部で死んだはずの主人公が第二部に再び現れるという設定になっています。全編が映画の物語と、その虚構性をめぐるもう一つの冒険物語と考えられますが、ジャンル的にはサスペンス映画なのです。しかし、スタイルはサスペンス映画ではないかもしれません。ドキュメンタリー的に語る視線を表すため、こういった手法を選びましたが、ジャンルとスタイルの因果関係を探求してみたい気持ちもあったのです。この映画は形式と構造にかなりこだわっているように見えるかもしれませんが、断固として物語のある映画なのです。観客に自由に自分の解釈と想像で楽しんでもらうために、意図的にいくつかのヒントと解釈可能な答えを仕掛けましたが、それらの意図が観客に伝わるかどうか、私自身確信はありませんし、成功したとも言い切れません。しかし、確実に言えることは、この物語は決してフィクションではないということです。虚構が現実に侵入する可能性はこの映画のラストでも示せたのではないかと思っています。 

 


作品情報

 

2009年/マレーシア・中国・日本/デジタル/98

監督・脚本・プロデューサー:リム・カーワイ 
撮影:Makin フォン・ビンフェイ 録音:山下彩 編集:奥原浩志、Philipe Lin 美術:Amanda Weiss 音楽:Albert Yu 製作・配給:CINEMA DRIFTERS
出演:大塚匡将、ゴウジー(狗子)、へー・ウェンチャオ(何文超) 

 

 

 

キャスト紹介

ア・ジエ:大塚 匡将
ア・ジエ:大塚 匡将

大塚匡将

幼き日にジャッキー・チェン主演映画『プロジェクトA』のNGシーンを観て以来、「こんなにも楽しそうな仕事があるのか」とショックを受け、香港映画、そしてコメディ映画に対し強い憧れを抱く。大学在学中にコントグループを設立し、舞台にて6年に渡る活動期間中、数百本のオリジナルコントを発表。同グループ解散後は、本人曰く「恐ろしく中途半端な」芸人として活動していたが、元々夢見ていた世界と日に日に離れて行きつつあることを痛感し、2005年、一念発起し日本脱出を決意する。直接香港に渡るつもりであったが、香港の友人の勧めにより、まずは(広東語ではなく)中国語の習得を目指し、「街全体がコントのような」北京に留学。北京電影学院漢語班にて学ぶ傍ら、世界中から集まった監督志望の若者達と共に、無数の短編作品を撮る。この留学期間中にリム・カーワイ監督、何文超らと知り合う。その後国家奨学金を得て、中央戯劇学院にて演技をから学び直していた07年、北京にて憧れのジャッキー・チェンとの対面を果たす。そして本人から「香港に行くより、チャンスの多い北京にいたほうがいいよ」とアドバイスされ、それ以後、北京を活動拠点とする。08年主演した香港インディペンデンス映画『恋人路上』にて香港国際映画祭に初参加。09年には中国大作映画『天安門』にて主役の一人に抜擢され注目される。10年『After All These Years』にて再び香港国際映画祭に参加。最近では香港ハリウッド合作映画『鉄拳無敵 : The Man with the Iron Fists』にも出演するなど、活躍の場を広げている。

メイリン:へー・ウェンチャオ (何文超)
メイリン:へー・ウェンチャオ (何文超)

 ヘー・ウェンチャオ

何文超: 

1983年湖南省生まれ。中国の名門大学、中央戯劇学院(ちゅうおうぎげきがくいん、略して「中戯」)テレビ・映画科監督コースの修士学位を取得。北京電影協会会員。女優として出演した映画、『我的教師生涯』(レオン・カーファイと共演し、モントリオール国際映画祭などで上演され話題となった)、『『花腰新娘(花嫁大旋風)』(2005年日本第5回「彩の国さいたま中国映画祭」に上映)など。監督として、卒業制作の『何小光の夏』が第14回釜山国際映画祭の短編コンペに選ばれて、話題を呼んだ。今、監督長編デビュー作『Sweet Eighteen』のポスト作業に取り組んでいて、女優のみならず、監督としても今後期待されている。

 公式ブログ:http://blog.sina.com.cn/chaochaofilm

ラオ・フアン:ゴウジー(狗子)
ラオ・フアン:ゴウジー(狗子)

ゴウジー

狗子

1966年北京生まれ。1992年から小説、エッセイなどを発表する。

出演映画『トーマス・マオ』(朱文監督)